
ゼニス 5S-127 1937
1937年のゼニスは、39モデルのラジオと5モデルのカーラジオをリリースしており、まさに隆盛を極めていたことがわかります。
そのなかでも一際目立つと言えば ”Tomb stone” (墓石ラジオ)で決まりでしょう。
本国アメリカで今なお不思議なほど人気があって、多くのレストアラーを魅了し続けているのです。
きっと、このラジオのもっている面白いフォルムには人を惹きつける何かがあるのでしょうね。
竪型ながらも意図的なラウンドコーナーを多用しています。
印象的な美しいガラス盤を大きく強調した特異的なデザイン。
直線、幾何学模様、シンメトリックで構成される、1930年代後期アメリカン・アールデコの素晴らしい見本ともいえる一品です。
また、随所にみえる豪華さも本機の魅力です。
例えばフロントフェイシアから天部に至るローズウッドの華麗な木目。これぞ5S-127の魅せ所であり、
往時の華やかさを取り戻し、どのように見せるかが、レストアの見せ所になります。
本機ではあえてハイグロス仕上げを避けて、ヌメるような光沢で木目を際立たせる技法「オイルポリッシング」で仕上げております。
木肌が持っている本来の美しさをご鑑賞ください。
裏を覗き込むと、銅製のシャシーに驚かされます。
こんな贅沢は見たこともありません。電気的に意味があるのかも不明ですが、
その美しい銅色が88年経っても変色せずにいるのを目にすると、
良い材料を惜しみなく用いることが出来た企業力、消費文化、国力と、全ての差を見せつけられた気がいたします。
おそらくそれは、現代のアメリカ人自身が、過去を顧みて感ずる事なのかも知れません。
Made in U.S.Aが最高だった佳きアメリカ文化のノスタルジアを存分に感じさせてくれる、Tomb stone
やはり魅力があります。
本機の仕様を記します。
5 Tube superheterodine 3band (A: 550-1700KHz B: 1.8-6MHz C: 5.6-19MHz )
中間周波数456KHz
使用真空管: 6A8-MT(1st DET,OSC) , 6K7-G (IF) , 6Q7-G (2nd DET) , 6F6-GT (Power) , 5Y3 (Rect)
フィールドコイルダイナミックスピ-カ- 2125Ω
電気的修復は以下の通りです。
電源コード交換
劣化CR部品交換 (電源フィルターケミコン、ペーパーコンデンサ、抵抗器)
配線引き直し
受信調整
今年はラジオ放送100年だそうですが、88年を生きながらえたラジオが、今なお電波を拾い、音声信号にまで
増幅できること自体、凄い事だと思います。
むしろ感度は標準型5球スーパーを凌駕しています。
それもそのはず、1950年代に造られた国産オールバンドスーパーよりも高性能に設計されているのです。
ぜひ実機に添付した仕様書、回路図もお確かめください。
当方での受信確認を経てはいますが、受信はご住居の地域、環境、構造に大きく左右される部分です。
臨機応変にアンテナを工夫することは大事です。最低でも数メートルのリード線アンテナをA端子に繋いでください。
また、整備品とはいえ本機の構成部品は90年近くの経年につき、コンディションの変化もあり得ます。
ご理解の上のご入札をお願い申し上げます。