英国EMI社が1950年代末頃に製造販売を開始していた楕円フルレンジスピーカーユニット、93870 AWと93870 APのセットです。私自身が使っていた際に端子に付けたケーブルはそのままの状態で発送いたします。
型番の末尾がAWとAPとで異なっておりますが、以下の理由からステレオなどでペア使用しても問題ないものと考えています。
・マグネットやフレーム、コーン紙などの見た目が全くと言っていいほど同一に見えること
・DCRを実測したところ、インピーダンス30Ω刻印のあるAWはが23Ω、APが25Ωであり、同一仕様の誤差範囲と考えられること
・イギリス国内のサイトを検索すると、AWについてはEMIの自社製品に組み込まれ、APについてはカナダのClairtone社の製品に組み込まれていた形跡があり、末尾の違いは仕向け先の違いを示していた可能性があること
93870 APの方はエッジ部分に若干の破損があります。8枚目の写真でご確認ください。この箇所のこのサイズの破損の音質への影響は、経験的にですが、微々たるものと考えられること、そして、補修することでエッジが硬化することのデメリットの方が大きいと考えられること、などから補修をせずに出品します。
破損の両端に少量の糊(木工ボンドを水で1:1希釈、など)を塗布して破損の進行を抑える、という対策は考えられますが、そこまでしなくても安心してお使いいただけるのでは、と考えています。
■主な仕様
磁気回路:アルニコ / 内磁式
外形:272 × 167mm
公称:30Ω
周波数レンジ:60〜14,000 Hz(イギリスのオーディオ愛好家の推定)
重さ:約1000 g
EMIの楕円ユニットとしては有名な高級スピーカーDLS 529に搭載されていた92390が有名です。出品の93870ですが下記のような点で92390とは異なります。
・93870は50年代末に登場、92390は60年代初めに登場
・楕円の短辺方向は両者ともに17cm弱だが、92390は長辺方向が約32cmと長い
・公称インピーダンスは93870が30Ω、92390は4Ωないし8Ωが多い(トランジスタラジオ黎明期に出た93870は、インピーダンスを高くしてアンプ側の負荷を減らそうとしていた可能性あり)
・93870は家具調のオーディオ機器の中低域ユニットとして主に使われ、92390はHiFiオーディオスピーカーの中低域ユニットとして主に使われた
G.F.Dutton博士という、戦前からEMIに所属し、戦後はEMIの録音部門の研究開発のトップとしてスピーカー設計にも携わった方がいるのですが、「楕円の振動板は円形の振動板よりも共振が分散しやすく、鋭い共振ピークが出にくい」という彼の発言が伝わっています
diyAudioなどのオーディオ自作関係のコミュニティでは、大型の92390系の音質は、「開放的で中高域の描写がリアル」などと評価されているようです。私自身は今回出品の93870を20リットル強の開放箱に入れてフルレンジとして聴いていましたが、ボーカルよりも上の帯域のニュアンスや空気感に富んだ再生が特徴的であると感じ、一般的な92390の音質評と通じるところがあるな、と思っています。93870でも92390でも、システムに組み込まれる際には高域側にツイーターが追加されることが多いのですが、実際に93870を単品で聞いてみると、低域よりも高域の伸びが印象的なところが不思議です。
1960年代頃のヨーロッパのペーパーコーンのフルレンジユニットは、素材を自然に高効率に使っている、というところがあり、それが今聴いても新鮮ないい音の再生に繋がっているように思います。つまりコーンにダンピング剤を塗布して重くしてみたり、ゴムやウレタンのエッジ&ロングボイスコイルでストロークを稼いだり、といった低音を出そうとする無理な工夫がない分、そのサイズに見合ったボーカルなどの中音域が割りを食わずに出てきている印象です。その中でも、密度間や実体感で訴求するTelefunkenなど西独の楕円フルレンジ、おおらかに朗々と歌うRFTのL6506(別途出品させて頂いております)、そして、ボーカルのニュアンスや空気感で聴かせるEMI、といった各社各様の特徴があるように思います。
93870 AW/APについては販売当時の資料があまり残っていません。ご参考まで、93870 APがサービスパーツとしてサービスマニュアルに掲載されていたカナダのClairtone社のS-401というのは、外装の木材をいろいろ選択できる家具調ステレオオーディオ機器で、チューナーとガラードのオートチェンジャープレーヤーが搭載され、中低域ユニット93870 APと2.5インチコーン型ツイーター97492が、25L6GT x 4のプッシュプルでドライブされていた、という感じのようです。
今回の出品にあたり動作確認をさせて頂いておりますが、写真をよくご覧いただき、よろしくご検討ください。
なお、円滑にお取り引きさせていただくため、恐れながらご入札いただいた方の過去の評価履歴を拝見させていただいております。落札者都合キャンセルがある方、悪い評価が3%程度以上ある方、気になる評価コメントがある方、などからのご入札については、お断りなくご入札を削除させていただく場合があります。よろしくご了承ください。