フィリップ・グラスの最新作は、ペーター・シュテファン・ユンクの同名の原作小説をもとにした『完璧なアメリカ人 The Perfect American』。アメリカのアイコン、ミッキーマウスの生みの親であるウォルト・ディズニーの最期の日々をクローズアップしたもの。そこにはミッキーやドナルドダックの夢にあふれる世界はなく、ウォルトの故郷マルスリーヌへの幻想、鉄道への愛着が執拗に語られ、スタジオをクビになった元従業員がウォルトの前に現れ彼を非難したり、昔殺したフクロウが少女の姿になって現れ、しゃべるエイブラハム・リンカーン・ロボットは制御不能に、アンディー・ウォーホルは肖像を描きたいといって訪ねてきたり。傲慢で専制的、保守的な、そして誇大妄想的なウォルトの姿が、グラスの催眠的な音楽の中に浮かび上がってきます。