基本情報|Release Information
レーベル:Invitation
品番:VIH-28133
フォーマット:LP
国:Japan
リリース年:1983
タグ:City Pop, Vocal Jazz, Japan, 1980s, Fusion
作品の解読|Decoding the Work
『'Swonderful』は、1983年という年代に記録されたセカンド・アルバムであると同時に、「スタンダード」という語が孕む規範性を、静かに溶かしてゆく試みでもある。仲村裕美のヴォーカルは、誇張や技巧の居場所を持たず、むしろ透明な輪郭のまま編曲の内側に潜り込む。そこにあるのは「歌う」というより「滲む」声。
冒頭を飾る「'S Wonderful」からすでに、耳に届くのはジャズ・ボーカルの形式ではなく、“ひとつの室内的な気配”としての音響。この気配は、「On The Sunny Side Of The Street」や「Unchained Melody」といった歴史ある旋律に新たな皮膜を与え、過去の定型からそっと距離をとる。その中庸さは、聴取の速度を和らげ、音楽を反射する壁そのものへと聴き手の意識を移動させる。
アレンジはフュージョン・ジャズの洗練をまとい、笹路正徳(マライア)やマイク・ダンら実力派が参加。鍵盤の粒立ちやブラスの配置は精密に管理されており、それぞれがセンテンスのように機能している。演奏は濃密でありながら決して前景化せず、声の周囲を音響として囲むように設計されている。結果として、各曲は「語られる歌」ではなく、「記録される出来事」のように響く。
本作の物理的配置──Invitationレーベルのカタログ内でも少数派となる女性ジャズ・ボーカル作品としての位置づけ、帯に印されたキャッチ「太陽の匂いがするジャズ・ギャル」なる言語の時代性──は、同時に“制度のなかで声がどう聴かれていたか”という問いをも孕む。それは声の演出だけでなく、声がどこに居場所を持てたか、という歴史の地層である。
希少性という言葉がこの盤に与えられるのは、単に在庫の少なさゆえではない。ここに刻まれたのは、「聴かれること」と「残されること」の間にある繊細な緊張である。それは、録音物が時間のなかで一度だけ開く、幻のような窓。その窓から差し込む光が、今もなお私たちの耳に、小さな影を落としている。
状態詳細|Condition Overview
メディア:NM(目視・試聴ともに良好)
ジャケット:EX(エッジに軽度の擦れ、裏面に小さなシール跡)
付属品:帯、インサート、アーティスト写真付きA4プロフィール用紙
支払と配送|Payment & Shipping
発送:匿名配送(おてがる配送ゆうパック80サイズ)
支払:!かんたん決済(落札後5日以内)
注意事項:中古盤の特性上、微細なスレや経年変化にご理解ある方のみご入札ください。完璧な状態をお求めの方はご遠慮ください。重大な破損を除き、ノークレーム・ノーリターンにてお願いいたします。