以下、作者の気持ちのなってのブラクラ妄想セールストークです〜〜
私の名はキケ。スペインの乾いた大地と、どこまでも青い地中海の空の下で、銀と語り、石の声を聞きながら生きてきた。これから私の手から旅立っていく、このささやかな作品について、少しだけ話をさせてほしい。これは単なる装飾品ではない。私の記憶、そして私の土地が持つ魂のかけらなのだから。
すべての始まりは、グラナダのアルハンブラ、その乾いた庭園を夏の終わりに歩いていた時のことだった。日差しはまだ肌を焼き、世界から色彩を奪い去ろうとしていたが、日陰に入ると、そこには深い静寂とひんやりとした空気が満ちていた。ふと、精巧なタイル細工の泉に目をやった。一滴、また一滴と、水が絶え間なく水盤に落ち、澄んだ音を立てている。その一滴は、生命そのもののように見えた。光を宿しては生まれ、水面に消えていく。始まりと終わりを内包した、完璧なフォルム。私はその「滴(しずく)」という形に、抗いがたいほど心を奪われたのだ。
私の工房に戻り、私はすぐに銀の塊を手に取った。月光を固めたような、冷たくも情熱的なこの金属を。私はあの水の滴を、永遠に留めたいと思った。熱を加え、打ち、磨き上げる。一滴一滴が、私の手の中で生命を宿していく。それは喜びの涙か、あるいは渇いた大地が待ち望む慈雨の一粒か。見る者の心によって、その意味を変える形。私はそれを「Anhelo(渇望)」と名付けた。満たされることのない、しかし生きる上で不可欠な、あの焦がれるような想いの形だ。
しかし、銀だけでは物語は完結しない。光だけでは、影の深さは生まれないからだ。私が必要としたのは、夜そのものだった。それも、スペインの高原で見る、星々が生まれる前の、すべてを包み込むような深い宵の色。その色を探し求めて、私は古より王と神々に愛されてきた石、ラピスラズリに行き着いた。
この石を手に取ると、まるで夜空の欠片を握っているかのような感覚に陥る。吸い込まれそうなほどの深い瑠璃色の中に、まるで星屑のように散りばめられた金色のパイライト。古代エジプトのファラオがこれを護符とし、ルネサンスの巨匠たちがこの石を砕いて聖母マリアのローブを彩色したという。この石は、単なる鉱物ではない。人類の祈りと憧れの歴史そのものを内包しているのだ。
私はこの宇宙的な青を持つ石を、銀の滴と同じ形に、ひとつひとつ丁寧に切り出し、磨き上げた。そして、光を放つ銀の滴と、すべてを吸収するラピスラズリの滴を、交互に繋ぎ合わせていく。それは光と影、昼と夜、語ることと沈黙することの対話だ。銀の滴が肌の上で光を反射し、生命の躍動を語る一方で、ラピスラズリの滴は静かにその内側へと深い思索を誘う。
このブレスレットを腕に巻くとき、そこにはリズムが生まれる。寄せては返す波のように、あるいは心臓の鼓動のように、規則的でありながら決して単調ではないリズムが。それは、身に着ける人の人生という物語に、新たな句読点を打つだろう。ある時は立ち止まり、内省するための「コンマ」として。またある時は、次なる飛躍へのエネルギーを秘めた「種子」として。
私は、私の作品がただ美術館のガラスケースに収まることを望まない。私の願いは、それが誰かの人生の一部となり、その人の肌に触れ、共に時を重ね、物語を紡いでいくことだ。太陽の下で、月明かりの下で、喜びの場面で、あるいは静かな悲しみの傍らで。このブレスレットが、あなたの体温を記憶し、あなただけの色合いに輝き始める時、私の仕事は初めて完成する。
さあ、この「Anhelo」の連なりを、あなたの元へ送ろう。どうか、これがあなにとって、単なる美しい物であるだけでなく、日々の生活におけるささやかなインスピレーションの源泉となりますように。スペインの空と、悠久の歴史、そして作り手の魂を込めて。
キケ