1. 【基本情報|Release Information】
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フォーマット:LP
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アーティスト:森田童子
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タイトル:A Boy(ボーイ)
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レーベル:Polydor
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品番:MR-3085
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リリース年:1977年12月10日
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編曲:木田高介、石川鷹彦、若草恵、青山勇
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付属品:帯、インサート付属
“詩う”というよりも、“記す”という感触に近い。森田童子の音楽は、自らの沈黙と他者の不在に、ひとつずつ言葉を貼りつけていく記録的な行為とも言えます。
『A Boy』は彼女の3作目であり、1970年代日本のフォークシーンにおいて最も私小説的な表現が凝縮されたアルバムです。
2. 【構造と文脈|Structure & Context】
● “ぼく”としての歌:視点と自己の構成
タイトルが示すように、本作は男性的な一人称“ぼく”を採用した語りによって構築されており、ジェンダーの揺らぎや、語りの代行性がアルバム全体を覆っています。
それは単なる文学的技巧ではなく、「語ることが許される人格」そのものを再配置する試みとも受け取れます。
「ぼくを見かけませんでしたか」「ぼくが君の思い出になってあげよう」といったタイトル群に、その徴候が如実に現れています。
● 音楽的手法:編曲家の分散的参加と“繊細の多層構造”
木田高介、石川鷹彦、若草恵、青山勇という4名の編曲家が分担し、それぞれ異なる密度と輪郭の音像を提供。
とりわけ石川鷹彦のギターが導く「君と淋しい風になる」や、青山勇が構成した「終曲のために 第3番『友への手紙』」は、森田童子の語りと演奏の間を、繊細に架橋する演出として機能しています。
この分散配置により、歌詞の重さに応答する“音の呼吸”が各楽曲ごとに異なる様態で展開されることになります。
● 社会との距離:1977年という時点での“うた”の在りかた
森田童子の音楽は、社会性を全面に出すのではなく、個人の孤立と沈黙を通して、むしろ社会の風景そのものを反射的に描き出す特異な性質を持っています。
1977年は学生運動の終焉と、高度経済成長の中で若者文化が変質していく時期。
『A Boy』の視線は、そうした変容の中で取り残された声なき者たちの名もなき日々を、静かに拾い上げているようです。
3. 【状態詳細|Condition Overview】
メディア:NM(極美品)
ジャケット:NM(極めて良好)
付属品:帯、インサート付属(いずれも美品)
4. 【支払と配送|Payment & Shipping】
発送:匿名配送(おてがる配送ゆうパック80サイズ)
支払:!かんたん決済(落札後5日以内)
注意事項:中古盤の特性上、微細なスレや経年変化にご理解ある方のみご入札ください。完璧な状態をお求めの方はご遠慮ください。重大な破損を除き、ノークレーム・ノーリターンにてお願いいたします。
『A Boy』は、“書かれた音楽”としての森田童子の中でも、特に静けさと語りの質感が張り詰めた一作です。
文学的というより、「詩と身体性と孤独」が編成された録音物として、本作は日本のポップ音楽史において極めてユニークな位置を占めます。
あらゆるディガーにとって、これは“聴く”というよりも、“読まれることを拒む記録”を手元に置くための一枚です。